狸の ため糞 物語
ある日、お隣のご主人が「ちょっと見てください」と庭を案内されました。
それは、シャクナゲの木の根っこに張られた有刺鉄線でした。
 知らないままでいると、黒い固まりが山のように積もるそうで、これが属に云う「狸のため糞」です。ため糞は毎日積もり積もって直径50cm、高さ20c位の小山のようになる事もあります。
 やはり同じ隣保組の武田さんちでは、庭の片隅で見つけ、一輪車一杯片付けたとおっしゃっていました。
最近、狸が毎日この木の根に糞をして行くそうで、クレオソートをまいても、杉の葉を置いてもやはり糞をして行きます。思案のすえ有刺鉄線をはったら、ピタリ来なくなったそうです。

 そんな話しを聞いた数日後、我が家の「小鳥の水場」の中に糞が落ちていました。ついに我が家に移動したようです。
 最初は、犬の糞と思っていましたが、どうも違うようです。先日お隣の話しを聞いていましたので「これが狸の糞か!」と気づいてすぐ片付けました。

 しかし、狸は夜行性です。毎朝糞があります。その都度片付けていましたが、小鳥が毎日来て美味しい水を飲んだり、水浴びをする神聖な場所に、糞をたれるとは。水を飲んで行くだけならいいのですが。
 お隣に見習って、「ここに入ってはダメですよ」と有刺鉄線で水場を囲いをしました。

「おしっこはするけど僕じゃないよ」
と、我が家のおりこうさん狸公
ここは水洗便所ではない。
狸は雑食です。ネズミ、ミミズ、野菜、穀物、肉等
この狸は柿を食べていました。
しかし、それでも狸は鉄線をかいくぐって糞をします。
これが糞です。


 次の朝、それでもかいくぐって中に糞をたれていました。こうなったら狸との知恵比べです。
 狸はずんぐりむっくりで短足です。飛び越えるのは無理と思って、下の方に一本有刺鉄線を追加して間隔を縮めました。

 それでも鉄線の前に糞をたれます。
毎日ホースで水場を掃除します。クレオソートとか木酢液をまくと効果があるとききましたが、水場ですので薬品はまけません。

昔映画の娯楽大作「大脱走」を思い出しました。バイクで逃げ回るスティーブマックイーンが、
ドイツ兵に追いかけられ、最後に無様な格好で有刺鉄線に絡まれ捕まりました。
こうなったら最後の手段です。捕獲するしかありません。有刺鉄線に細工をしました。
しかし翌朝、それでもあざ笑うように糞をたれています。

再度、細工を巧妙しました。


 翌朝午前2時過ぎ、異様な動物の鳴き声で目が覚めました。二階の窓から真っ暗な水場に懐中電灯を照らすと、大きな狸が鉄線に絡まり、身動きがとれなくもがいていました。
 まさにスティーブマックイーンです。

 夜が明けて隣のご主人に連絡しました。

 一晩中痛い思いをしたので、もう懲りてここには来ないだろうと思い、鉄棒で押さえ、絡まった鉄線をすべてペンチで切り、離しました。

 一目散に去って行きました。

知恵比べは私が勝ちました。
 私が、精一杯狸に与えた罰です。顔にカラースプレーを吹きかけました。
本人は分からなくても、巣穴に帰ったら家族もビックリする事でしょう。
めちゃくちゃになった水場

 それ以来狸は来ません。きれいに水場を掃除して鉄線を外しましたが、又来るかもしれないと思い、しばらく一部残す事にしました。我が家で懲りた狸は、またお隣に移動したようで、「また糞をしに来ました」とご主人。
「鳥害・獣害こうして防ぐ」の本をネットで取り寄せ勉強し、お隣のご主人に「狸の編」のコピーを持って行きました。
 翌日、本にあった木酢を使った撃退法を試されました。お隣りからメールが来ました。
 昨日「木酢原液」を周囲にかけ、全面に「犬猫カット」の粒剤を撒いて今朝見に行きましたら、叉糞をたれていました。困ったものです。今日は再度有刺鉄線を張ろうかと思っています。 残念無念です。

その狸は「青い顔の狸」かは定かではありません。
次の手はこれです。本にあった別の方法です。レジ袋に土を入れ、さげる部分を
うさぎの耳のようにピンと立てます。狸にとっては生き物のように見えるのでしょうか。
おかげで三日は来ていません。
ワーッ!何だこりゃ〜
花壇の前
土手の下
 コラ〜ッ! いたずら狸〜!
しかし我が家では、一安心と思っていたら4日後、またたれていました。
狸の
は量からみて、別の小狸のようです。
今日新たに、ミミズを探しているのでしょうか、花壇や植木の根っこをさんざん掘った跡や、
花壇の土手の下にを見つけました。


しかし二日後、跡の土手のレジ袋が押し倒され一回転して後ろ向きになっていました。
そして元の位置にきちんと
をたれていました。

今日、庭の落ち葉を掃いていると、何とバーベキューテーブルの下にもを発見。
気づかずにいると
「ため糞」になるところでした。
皆で美味しくバーベキューを楽しむ場所に
をするとは。

「自然との優しい共存を唱える私も限度があります。

も〜っ 許さん! おじさんは怒った!
こわい〜っ
お前は今後害獣とみなす。
               
          
今日、お隣の庭先から南郷谷を撮影中、栗畑に昔埋められた土管に異常を発見。
ますます怒ったおじさん
 明らかに入り口を掘った跡が有ります。
直径30cm程の土管ですが、今まで入り口は土に埋もれて見えませんでした。もしかしてここが狸の巣か。周りはミミズを探して掘った跡が無数に有ります。
今日も「小鳥の水場」に狸の糞が。
すぐにお隣のご主人に連絡しました。
明日10時からいぶり出す事にしました。
土管の末端は10m程で下の疏水へ。

煙突に火を入れるのと同じです。しかし中には狸は居ませんでした。
杉の葉を詰め込んで火を付けました。上まで煙が勢いよく立ち上がりました。
 我が家の下の疏水沿に、放置された貫(隧道)跡があります。久木野の旧道沿いで疏水を渡った裏口になりますが、イタチ、狸等の巣には絶好の場所です。ここに居座っているのではと分かってはいたのですが、周りは竹林ですので危なくて火は入れられません。

 今日思い切って、貫に俄作りのダクトを突き込んで、10年目にして初めて火を入れいびり出す事にしました。
 しかし反応はありませんでした。明日も燃やします。 

  ついでに芋でも焼きましょう。



これでもダメなら、天敵のワンちゃんのお出まししかないようです。
今日も作業中に倉庫の裏で「ヌチャッ」を踏みました。頭にくる事しばしば。

「おじさん、狸ならおいらにまかせて」

「頼りなさそうだけどよろしく頼むよ」 


↑ 狸
しまった!顔をみられた。
「狸が二匹」 早朝柵の下から覗き見る狸。「青い顔の狸」ではなさそうです。
我が家の狸公曰く。「足下に来ていたら柄杓でたたいていたのに」

       狩猟鳥獣の狸について  

本州以南にホンドタヌキ、北海道にはエゾタヌキが生息しています。水辺の森や下草のある林に棲み、
夜行性なのでめったに見かけませんが、人家が近い里山に多く、都市部の家屋などの床下などにもいます。
姿はメタボの固まりのようにズングリムックリでおまけに短足。イヌ科で嗅覚がするどく、
地面に顔をつけ匂いを嗅ぎながら、走るというよりも、ノコノコとはうように
歩きますので、時々車にはねられているのをよく見かけます。
雑食性で、ネズミ、ミミズ、昆虫、カエル、果物や
残飯等を食べ、家族で暮らし、春先に四〜五頭の子を産みます。

鳥獣法ではイノシシ、シカ、クマ、さらにタヌキやキツネ、カラス、ハト、スズメ等の狩猟鳥獣は、
知事の許可のもとで捕獲する事が出来ますが、垣、柵その他これに類するもので囲まれた住居の敷地内で、銃器を使用しないで行う狩猟鳥獣の捕獲等は許可を得ないでも許されます。
捕獲 引っ越し作戦

  最後の手段。捕獲する事にしました。
 前回は離してやりましたが、カラースプレーくらいでは懲りていないようです。
 よほど居心地がいいのか、ますます活発に活動しています。毎夜庭のあちこちに穴を堀り、折角植えたビオラの苗をひっくり返しています。ミミズを探しているようですが、お隣の栗畑など穴だらけでひどいものです。おまけにお土産の

 これ以上居座ってもらっては困ります。
 先日、狸と目を合わせた箇所に簡単なくくり罠を仕掛けました。投げ縄と同じ要領で、ステンレスの細いワイヤーで作りました。柵に罠をくくり付け外れないように固定します。50cmほど先に直径20cm程の輪をつくります。ちょうど顔が通り抜けて胴体で締まる仕掛けです。
 通り道と思われるケモノミチに置きました。勿論罠を作る時も掛ける時も手袋をします。人間の匂いが付いていると警戒して寄り付きません。

 鳥獣の保護及び狩猟の適正化の関する法律(鳥獣法)


     ついに決着がつきました。

 やはり私の勝利でした。翌早朝、仕掛けた場所にタヌキが居ました。私が近づくと、もがいて逃げようとしますが、身動きがとれないようです。完全に罠が胴体を締め付けていました。

 謝っているのか観念したのか、下を向いてグーグー言っていました。毛はきれいにそろっています。雄かメスか分かりませんが、丸まると肥ったメタボ狸でした。

ごめんなさい
最後の知恵比べは ........

すぐ裏の南外輪山に清水峠があります。
車で30分程のところですが、峠を越えると南に山都町(旧矢部町清和村)の原野が広がります。
ここは4年前に道路端に捨てられ、うずくまっていた白ウサギ(後の梅太郎物語)を拾った場所です。
捕獲した狸はこの原野に引っ越してもらいました。ここならトラック一杯大糞をたれても誰も文句は云いません。
もしもまだ残った狸が居たら順次ここに連れて来る事にしました。
この場所で、以前捨てられた飼いウサギを保護し、今年は野生の狸を自然に戻しました。


私はこの地に来て10年になりますが、「狸のため糞」動はかってない出来事でした。
今のところ一段落つきましたが、野生動物と人間とのかかわりは多面的な側面を持っています。
狸はイヌ科の動物。昔から人家の近くに居て、人とのかかわりがある動物で、ケモノ偏に里と書きます。
そのため農村の生産者は、野生動物による被害は生活を脅かされます。収穫間近のトウキビが狸に食い荒らされ全滅。
トウキビに限らず、野生動物による農産物の被害でも辛い思いをされています。
そのような経験がない都会の消費者と生産者とでは、野生動物に対する感情は全く違うものがあるように思いました。

私はその中間にあって、野生動物との共存は、言葉で云うよりも難しいものと身をもって体験し、
あらためて長い付き合いをしていかねばならないと感じました。

 おわり 

第二部とは大げさですが、その後の水場です。また別の狸と思われる狸が現れました。
「小鳥の水場」のページ 狸の水場荒らし」をご覧下さい。